公的医療保険とは
公的医療保険とは、病気やけがによって生じる医療費の経済的な負担を、加入者どうしで支え合う社会保障制度です。日本では、すべての国民がいずれかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されており、保険証があれば全国どこの医療機関でも自由に受診できる仕組みになっています。この国民皆保険制度は1961年から実施されており、国民の健康保持と生活の安定に大きな役割を果たしています。
公的医療保険の種類
公的医療保険は、加入者の働き方や年齢に応じて、いくつかの制度に分かれています。
被用者保険
会社員や公務員など、雇用されて働く方とその家族が加入する保険です。主に中小企業で働く方が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)、主に大企業で働く方が加入する組合管掌健康保険(組合健保)、公務員等が加入する共済組合などがあります。
国民健康保険
自営業者や農業従事者、無職の方など、被用者保険に加入していない方が加入する保険です。市町村(都道府県)が運営する国民健康保険のほか、同業者団体等が運営する国民健康保険組合もあります。
後期高齢者医療制度
75歳以上の方(一定の障害がある場合は65歳以上の方も含む)を対象とする保険です。それまで加入していた被用者保険や国民健康保険から切り替わり、都道府県ごとに設けられた広域連合が運営しています。
保険料の決まり方
公的医療保険の保険料は、加入する制度によって決まり方が異なります。
被用者保険の保険料
被用者保険の保険料は、標準報酬月額に保険料率を掛けて算出され、事業主と被保険者が半分ずつ負担する「労使折半」の仕組みになっています。そのため、被保険者本人が実際に負担する金額は、算出された保険料の半分で済みます。
国民健康保険の保険料
国民健康保険の保険料は、所得に応じた「所得割」に、世帯の人数に応じた「均等割」などを組み合わせて算出され、市区町村ごとに料率や金額が定められています。国民健康保険には事業主にあたる存在がないため、算出された保険料の全額を加入者自身が負担します。
後期高齢者医療制度の保険料
後期高齢者医療制度の保険料は、被保険者全員が均等に負担する「均等割額」と、所得に応じて負担する「所得割額」を合計して、個人ごとに算定されます。保険料率は、都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合が2年ごとに見直しを行い、決定します。所得が低い世帯については、均等割額が軽減される仕組みも設けられています。
同じ収入であっても、被用者保険は労使折半による軽減があるのに対し、国民健康保険は全額自己負担となるため、国民健康保険の方が負担が重くなりやすい傾向があります。
自己負担割合の仕組み
公的医療保険に加入していると、医療機関を受診した際、医療費の全額ではなく、年齢等に応じた一定の割合を自己負担するだけで医療サービスを受けることができます。自己負担割合は、義務教育就学前の乳幼児は2割、小学生から70歳未満の方は3割、70歳以上の方は2割(所得が一定以上の場合は3割)となっています。
また、同じ月に医療機関等で支払った自己負担額が一定の限度額を超えた場合には、申請することで、その超えた分が高額療養費として払い戻される仕組みも設けられています。自己負担限度額は、年齢や所得の水準に応じて異なります。
公的医療保険の主な給付
公的医療保険からは、医療費の自己負担割合の軽減以外にも、さまざまな給付が行われます。
すべての制度に共通する主な給付
被用者保険・国民健康保険を問わず、共通して設けられている代表的な給付には、次のようなものがあります。
医療機関での診察・投薬・手術・入院などの医療サービスについて、費用のうち自己負担割合を除いた残りの部分(70歳未満の方であれば費用の7割程度に相当します)を保険者が負担する「療養の給付」、出産にかかる費用の負担を軽減するために支給される「出産育児一時金」、被保険者が亡くなった際に支給される「埋葬料」(国民健康保険では「葬祭費」)などです。
被用者保険のみに設けられている主な給付
病気やけがで働くことができず、給与の支払いを受けられない場合に支給される「傷病手当金」と、出産のために仕事を休み、給与の支払いを受けられない場合に支給される「出産手当金」は、被用者保険のみに設けられています。そのため、自営業者など国民健康保険に加入している方は、これらの給付を受けられません。
まとめ
公的医療保険は、国民皆保険制度のもとで、すべての国民がいずれかの制度に加入し、医療費の負担を支え合う仕組みです。働き方や年齢によって加入する制度が異なり、自己負担割合や給付内容にも違いがあります。ご自身がどの制度に加入しているかを把握し、制度の内容を正しく理解しておくことが大切です。